サードの家で取材しているとき外の路地から鉄製のリングを「カラン、カラン、カラン」と叩く音が聞こえてきた。
その音は澄みわたった空に響いて耳に残る音だった。
外に出ると路地を灯油の入った大きなタンクを荷馬車に引かせながら売り歩く兄弟が客寄せにたたいていたのだ。
二人の名前はハッサン(15)と弟のラカルだ。 |
ラカルは年を聞いても 自分の年齢がいくつなのか知らなかった。 |
二人の名前はハッサン(15)と弟のラカルだ。
ラカルは年を聞いても自分の年齢がいくつなのか知らなかった。
隣で兄のハッサンが11か12だと言ったが兄も、はっきり知らない。
きっとラカルは誕生日を誰からも祝ってもらった事がないのだろう。
ラカルは1年生になったときに少し学校に行ったきり、それから学校に行っていない。
ずっと前の事だから忘れてしまった。
「学校に行ったって何も役に立たない」といっていた。
彼にとってこの商売のほうがずっと楽しいらしい。
学校に行けずに働いている子どもたちに聞くとかならず、学校に行きたいと言うが、
ラカルは直ぐにやめてしまったために学校の楽しさを知らないのかも知れない。
彼にとってどちらが幸せなのか?
「今年はなぜなのか知らないがすごく景気がいい」と兄のハッサンが言っていた。
戦争が近いから、市民が買いだめしている事も知らないらしい。
彼らにとってそんな事はどうでもいい事なのだ。
写真を撮り始めると近所の子どもたちが集まってきて、ラカルの周りが子どもたちで一杯になってしまう。
そんな事全く感知せず、黙々と働いていた。彼の顔には自身と誇りが満ちていて、12歳の少年とは思えないたくましさがあった。
灯油で一杯になった缶を素手で運ぶため灯油が手に沁み込んでいるようだ。
灯油とホコリで汚れ、しわだらけのその手は小さく、冷たい風にさらされていた。
通りかかった、茹でたヒヨコマメを売る屋台を呼び止めちょっとしたおやつを食べていた。
その顔には少しだけ幼さが残っていた。 |
その顔には少しだけ幼さが残っていた。
サードの家の前の路地で遊ぶ子どもたち。 |
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