| |||||||
国連査察団とのカーチェイス | |||||||
(日本時間 12/26 0:48受信) | |||||||
12月22日国連の大量破壊兵器査察の取材に出かけた。
いつものカーディムのおんぼろ車カナダ製シボレー81年型マリーボではとても出せない猛スピードで国連の事務所に なっているエルカナートホテルに向かった。 10分程で到着。まだ日の出前でちょっと暗い。一番乗りしたのいいのだけれど、寒い。 警備の兵士は防寒服を着ている、はく息が真っ白。東の空が赤くなり日が差し込んできたが、誰もまだ来ていない。 早すぎる、カディームが自分の腕時計を指して、にやりと笑った。 「ほら、7時にホテルを出れば十分間に合っただろう」と。 8時過ぎ、ようやくAFP,イラクTVのカメラマンが国連事務所の正面のカメラを据えた。 国連に雇われたイラク人や国連職員が慌しく出勤してゆく。イラク人職員はぼろぼろのタクシーに乗ってくるものも沢山いる。 8時20分建物前の動きが慌しくなり、青い帽子をかぶった査察官らしい人が車に乗りこんで行く。 一斉にカメラマンたちが自分の車に乗り込む。 次々とゲートから出てくる国連の車、それと査察を受けるイラク側施設関係者の車が一斉にハイウエーに飛び出してゆく。 見失わないようにと報道関係の車が続く。 およそ20台近い車が、ハイウエーを猛スピードで駆け抜ける。車列に一般車が紛れ込むとこの車も一緒にカーチェイスだ。 100キロ以上のスピードでもほかの車を割り込ませないために車間距離はせいぜい2、3メートル。 前の車が急ブレーキを踏んだら追突は避けられない。カーチェイスを15分ほど繰り広げバクダッド郊外に出ると猛烈な霧。 視界が20メートルも無い。互いの位置を確認するため、ハザードランプが点滅する。 はらはらしながら後部差席から眺めていると、先頭車が何かの工場のようなところに入っていった。 知り合いのイラク人カメラマンが家畜の飼料工場だと教えてくれた。 工場の中に吸い込まれっていった査察官は何をしているのか霧が深くて全く見えない。 カメラマンは全くのお手上げ。ロイターのカメラマンが携帯電話を取り出し、何処かと連絡を取っている。 私にもう一箇所いま査察が入っているから一緒に来ないかというので、是非連れてってくれと頼んだ。 車で10分もいしないうちにもう一箇所の工場のようなところについた。 すでに、別の査察団は査察を始めていた。ここは霧も晴れて金網越しに工場の中が良く見える。 だが、吹きさらしは寒い。エジプトのカメラマンが焚き火で暖を取っていたので、一緒にあたらせて貰った。 冷え切った体には、焚き火は何よりのもてなしだ。 建物内に入れないジャーナリストたちはいつも外から金網越しに成り行きを見守るしかない。 建物の中に入ってしまえば、完全に何をしているのかわからず、お手上げだ。焚き火でもして、雑談しながら過ごすしか手が無いのだ。 突然査察が終わった国連職員が外に出てくると一斉にレンズの砲列が彼らの一挙手一投足を追う。 11時過ぎ査察を終えて国連の車が工場の外に出てきた。工場の門前でサダムフセインの肖像が見送っていた。 国連査察団が誰も居なくなった後、ジャーナリストの工場内立ち入りが許され、建物中に入る事が出来た。 ここは乳児用ミルクを作ってる工場で、今は動いていないらしい。 錆び付いたミルク冷却用の大型クーラーや大小のパイプの入り組んだプラントは何の変哲も無いただのミルク工場に見える。 工場のマネージャーのウセフ・ヌレタさんが会見で「ここは以前にも査察を受けました。何も見つかりませんでした。 ここは湾岸戦争のときに破壊されようやく立ち直ったのです、査察はミルクの品質管理の研究室も行いましたがここも何も出ませんでした」と。 まるでオウムのサティアンのような巧妙さは全く無いこの工場になぜ、査察が必要なのか。 イラクの提出した大量破壊兵器に関する報告書の最高機密部分がアメリカの手によって抜き取られていたということが、 12月17日付のドイツ紙ターゲスツァイトゥングてによって暴露された。 それによるとイラクはジュネーヴのIAEA(国際原子力機関)とニューヨークの国連本部にそれぞれ1部ずつ12,000頁の報告を提出したが、 アメリカは安保理議長国のコロンビアを脅迫して、国連の受け取った報告書を手に入れた。 その後、米国は報告書のコピーを他の常任理事国4カ国に配ったが、非常任理事国10カ国がコピーを受け取ったのは、 たった3000ページだけだった。 抜き取られた部分にはイラクへの大量破壊兵器の技術供与や武器援助などで動いた米国そのほかの企業名が記されていた。 という。 まさに、イラクの大量破壊兵器を生み出した責任はイラクではなくアメリカやその周辺の国に責任がある事を暴露してしまったのだ。 この暴露で査察の意味がなくなってしまった。ゴネル駄々っ子のアメリカを納得させるためのつじつまあわせのような査察だ。 しかし、単なる駄々っ子ではなく核兵器を振り回している駄々っ子だから始末が悪い。 こんな米国に地球の未来が左右されてしうのはなんともやりきれない。 |
このサイトの写真・文章の著作権は、森住卓に属します。無断での二次利用を禁じます。 |
Copyright Takashi Morizumi |