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スパイごっこ

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スパイごっこの少女
 ボデネ村は核秘密都市のクルチャトフに近い。外国人である私たちをめずらしがって集まって きた村人たちで人垣が出来たのだ。

 その人垣の中に鉛筆と紙切れを持った10歳くらいの女の子がいた。あどけない子どもだったが その目つきは鋭く、じっと私たちを見つめている。

 そのうち大人たちの会話の中に切り込んできた少女は 「どこから来たのか、目的は何か、いつまでいるのか」などの質問を機械的に行ない、メモをすると 走り去っていった。そばにいた大人たちはニヤニヤして見ていた。

 彼女は親に報告するのだと言う。スパイごっこでなく、彼女の頭の中にはソ連時代の監視体制が生きて いるのだろうか。

 人の心はいまだ解き放たれず、心の扉を固く閉ざしている。これが大きな障害となり、 必然的に腐敗と沈滞と失望の社会を生みだしているように思われる。 


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