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マーシャル諸島メジット島 レポート 目次へ

南国の楽園1――マーシャル諸島メジット島 (1)


島の青年がヤシの実を割って持ってきてくれた。このジュースはさっぱりしていておいしかった。

メジット島に到着した定期便DO-228型機。荷物の積み卸しをしているのは、国会議員のアネニー(右)さん

飛行場の待ち合い室から離陸する飛行機を見送る子ども達

飛行場に着いた荷物を運ぶのはリヤカーだ
マーシャル諸島共和国は"真珠の首飾り"と言われる29のサンゴで出来た環礁と5つの単独の島からなる美しい島国だ。日本の南東およそ4,000キロメートルにある。最近は日本からもダイバーが訪れる。太平洋戦争中までここは日本の植民地だった。
 首都マジュロから飛行機で1時間半。メジット島が見えてきた。この島は環礁ではなく周囲が約9,5キロメートル南北に長い独立した島だ。 島の外側はサンゴのリーフに囲まれ、太平洋の荒波から島を守っている。
 19人乗りDO-228型機は私とメジット島出身の国会議員ヘルケナ・アネニーさんと島民6人、合計8人がこの便の乗客だった。客室と荷物室は一体で、乗客のいないときにはシートをたたんで荷物を積み込むスペースになる。今回は冷凍の鶏肉や米などの食料、建設資材などを運んできた。ヘルケナ・アネニーさんはガイドとして同行してくれた。 小さなプロペラ機は島の中央にある滑走路に着陸した。未舗装の滑走路にするので慣れない人はちょっと緊張する。珊瑚でできた島だからブルドーザーで凸凹を平らにすれば滑走路ができあがる。もちろん管制塔などない。全てがパイロットの腕にかかっている。
 滑走の真ん中にある2階建てのターミナルでは島の人たちが、到着を待ちわびていた。島の人々が「空港」に集まるのは、到着した飛行機に特に用事があるわけではない。小さな空港が隔絶された「小さな島」と世界を結ぶ貴重な場所だから人々が自然と集まって来るのかもしれない。そして、外の情報にいち早く接することができる唯一の場所なのだ。タラップから降りると、近づいてきた婦人が香りの良い花で作ったレイを首に掛けてくれた。「ヤッコエ」(こんにちは)と挨拶をかわした。 降ろされた荷物はリヤカーに乗せられ運ばれてゆく。この島には自動車が一台もないのだ。輸送手段は自転車かリヤカーだ。とてもエコロジー。
 この島にあるエンジン付きの機械は持ち運びできる小型の発電機が数台あるだけだ。これは建設機材を動かす電力を確保するのに使われていた。
 昨年ドイツの援助でソーラー発電設備が各家庭に備え付けられ、電灯が灯った。
 私はこの島に次の飛行機がやってくる翌週まで缶詰となった。
 お世話になる家は国会議員のアネニーさんの弟ウオルター・アネニーさんの家。西側の海岸に面したヤシやパンの木に囲まれたコンクリートで出来た住宅だ。
 ウオルターさんは32才。物静かで優しい男だ。奥さんは29才。昨年生まれた赤ちゃんと2才の子どもがいる。「子どもは10人ぐらい欲しいわ」とウオルターさんよりうまい英語で話しかけてきた。ウオルターさんは建設関係の仕事をしている。いま建設している集会場の工事責任者だ。
 着替えを終わって浜に行こうとしたら、若者がヤシの実を割って飲んでくれと、持ってきた。空港でのレイの首飾りといい、ヤシのジュースといい、心のこもった歓迎に大感激。のどが渇いていたので一気に飲み干してしまった。飲み終わって、ウムで汚染されている事にはっとさせられた。
 浜辺にはひとっこ一人いなかった。ベージュ色の砂浜は南国の太陽がじりじり照りつけ、裸足の裏が焼けてくる。時々リーフを超えた波がゆったりと押し寄せるか静かな午後だ。
 島の人たちは一番気温が高くなる2時頃までは昼寝しているらしい。この時間は人の声がほとんど聞こえない。浜辺は私一人だけの完全プライベートビーチ。到着1時間でリゾート気分。何しに来たのか忘れてしまうくらいリラックスできる。水深2メートルぐらいの所にはたくさんのサンゴが群生している。しかし、その周辺には白骨化したサンゴが無惨な姿をさらしている。水中の景色は陸上では気づかない気候変動の影響を受けるデリケートな場所でもある。
 サンゴの死滅は1998年のエルニーニョ現象で海水温度が上昇したためだ。だが、その白骨化したサンゴの上から少しずつ黄色やベージュの新しいサンゴが再生を始めていた。近くにはツノダシの仲間がゆっくり泳いでいた。

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