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お産と停電の話

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カイナール村
 出産の写真を撮ってくれと言われた。男が分娩室に入るのはあなたがはじめて、 しっかり撮ってよと励まされた。
(カイナール村 1998年5月)
 陣痛の間隔が狭くなり、いよいよ赤ちゃんが産道を通って出てくる。撮影を始めて1時間後、ぶじ元気な 赤ちゃんが誕生した。大仕事をしたトグジャン新米母さんは、初めて見るわが子を抱き寄せ本当に幸せそうな 笑みをたたえている。

 分娩室に入る前から、私は赤ちゃんが奇形や内蔵疾患や何らかの障害をもって生まれたと いう危惧を心の片隅にもっていた。トグジャンさんも私以上に心配していたことだと思う。 この地方に生きる人々にとってこの種の心配は誰もが持つことだ。そのため出生率が極端に下がっている。

 ところでたしか、昨日の昼間、アキンバイ医師は今夜は8時から停電になると言っていた。それについて質問すると 「タカシ(森住)が来たから給電所と話をつけて、10時まで停電するのを延ばしてもらったんだ。お産があると いうのでさらに2時まで延ばしてもらった」のだそうだ。

 お産があるときはいつも停電しないのかと聞くと「停電の時はロウソクの光の中でお産をするのだ」ということだった。


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