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エレオガゼさんの怒り

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エレオガゼさんの奥さん
 エレオガゼさんは、皮膚ガンと肝臓病が悪化し、300km離れたセミパラチンスク市の病院に入院することになった。 奥さんが、いつまでも車の後ろ姿を追っていた。
(カイナール村1997年8月)
 エレオガゼさん(67歳)は怒っている。
「ソ連時代、政府は何も助けてくれなかった。チェルノブイリはロシア政府が助けているのに、カザフスタン政府は 私たちに何もしてくれない。1991年に30万ルーブルもらったが、インフレがひどくて価値がどんどん下がってしまった」

 1999年の冬、私(森住)は、雑誌に載せた彼の写真を持って訪ねていった。別れる時に、彼はもう来ないでくれと怒って言った。

「たくさんのジャーナリストが来たが、私を助けてくれる人は誰もいなかった。何も改善されていないではないか」と 苦しい胸の内を話始めた。私は返す言葉が見つからなかった。

 同じようなことを言われて取材できないことは、他にも何度もあった。 そのたびに私は、写真家としてこの人達に何がして上げられるのか、この写真がどれだけ 助けるための力になるのか、絶えず自問自答せざるを得ない。


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